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Reed Organ 2


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オルガン製作家たちが、オルガンに 『連続した強弱変化の表現力』 を与えようと、十八世紀終盤から試行錯誤を繰り返してきたことは既に述べましたが、音源に採用した『自由振動リード』にはパイプオルガンのように大がかりな共鳴胴が不要であることが判ると、今度はいかにコンパクトな楽器にするかが焦点となりました。最大の特徴である強弱表現能力を際立たせるためにも、奏者を鍵盤と送風ペダルの操作に集中させる必要があると判断されたため、一段鍵盤でありながら二段鍵盤の効果を発揮するイタリアのオルガンにヒントを得たストップ構成が採用され、リードオルガンの最初の標準仕様が決定します。この楽器はフランス人製作家ドゥバンにより1842年に 『ハーモニウム』 という名前で商標登録されました。  
     
  ハーモニウムは、工場制手工業により量産されますが、各パーツの設計思想の根底には、パイプオルガン製作の伝統が流れています。二つのペダルで操作される送風ポンプはパイプオルガンと同じ「加圧式」ですし、ストップの構成もパイプオルガン流のファウンデーション系 (柔らかな音色) とリード系 (にぎやかな音色) の二群に整然と分かれています。一列のリード群を鍵盤の音域のほぼ中央で二分し、高音域と低音域とで別々に操作するというイタリアのオルガンの発想は、この配置に慣れないピアニストにとっては不便極まりないものかもしれませんが、一段鍵盤の採用による小型化・低価格化のメリットは計り知れないものがあります。もしハーモニウムが最初から二段鍵盤を標準としていたら、欧米はもとより日本でもこれほどの普及をみることはなかったでしょう。  
     
さて、ここまで、「自由振動リード」 を用いた鍵盤楽器をハーモニウムあるいはリードオルガンと、特に区別することもなく呼んできましたが、厳密に言うとこの二者の間にはそれなりの違いがあります。ハーモニウムが加圧式である旨は上にも明らかですが、リードオルガンは減圧式で、ペダルを踏むと真空ポンプがはたらいて楽器内部の気圧を下げ、鍵盤を押した時それに対応するリードの下に設けられたバルブが開き、外部の空気がそこから楽器内部に進入する過程でリードを振動させる、という仕組みで音が鳴ります。この方式が加圧式より優れている点は、何よりまず楽器の気密を保つのが容易であることです。これは、気密室を構成する隣接した各部材が、楽器内部の減圧化に伴い相対的に高まる大気圧でお互い自然に密着し、気密度を高めてくれることによります。これは楽器の低価格化と直結しており、小単位で活動を展開するプロテスタント系キリスト教の伝導や、明治期日本の唱歌教育の確立に大いに貢献しました。日本のオルガン史に関しては、次の本を一読されるようお奨めします :

『オルガンの文化史』 / 赤井 励 著 / 青弓社 / ISBN 4-7872-7216-0 (2006年)
 
     
  リードオルガンの音色は、一般的にハーモニウムの音色よりくぐもった感じがしますが、これは味わいの違いであって、ハーモニウムの方が優れているとはいえません。リードオルガンは、 「楽器内部に入ろうとする空気の流れを利用して音を外に出す」 という直感的には理解し難い面がありますが、上にみる 「空気の流れる方向と音の出る方向との不一致」 が音響エネルギーを相殺している、とだけ理解しておいて下さい。これは、リードオルガンの醸し出す哀愁に満ちた音色の原点なのですから。  
     
  リードオルガンを軸にハーモニウムの歴史をも包括した格好の本が出ています。この楽器に興味を持たれる方にとっては必読書かもしれません :

"The American Reed Organ" / Robert F. Gellerman / Vestal Press /
ISBN 1-879511-12-6 (1996)
 
     
これ以外で二者の大きな違いは、エクスプレッションという、マニュアル・モードが存在するかどうかです。ハーモニウムはエクスプレッションを使ったマニュアル・モードで演奏することが基本であるのに対して、リードオルガンにはこの機構が存在しません (実験的に試されたことはありましたが、機構の複雑化の割にハーモニウムほどの効果が得られないことが判り、普及はしませんでした)。この機構を使うと、ペダル (送風ホンプ) を踏む足の動きの微妙な変化は、リードに供給される空気圧の変化にそのままダイレクトに反映されるため、ペダル操作への習熟の度合いに応じてクレッシェンド、デクレッシェンド、スフォルツァンドといった強弱表現が真に奏者の意のままに出来るようになります。ギルマンカルク=エラートといった作曲家が、ハーモニウムの特性を最大限に活かした作品を数多く遺しています。  
     

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南仏 ソスペル (F-06380) は、聖ミシェル教会の アガティ・オルガン (1843)
の写真を加工したものです。
Copyright 1994 Shoichiro TOYAMA
 
アップデート : 2006/12/11 by 遠山 祥一郎
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